社長より仕事できる部下

二代目社長さんをご支援する中、「自分より仕事できる部下がいる。それも嫌なのだけれど、それをひけらかすような話をされると、すごく嫌になる」というお話をお聞きする時があります。

そんな状況、確かに二代目社長にとって辛いでしょうね。

一方で、実は、そうでないと困ると言わなければなりません。

二代目社長は、多くの場合、会社の中では新参者の部類に入ります。社員のほとんどが二代目社長よりも仕事できないと、その会社は回って行かなくなる可能性があります。

そういう時、私は「社員の話、もっとじっくり聞きましょう」と言うようにしています。少し自慢かかった話を聞くのは辛いかもしれませんが、そこを敢えてしっかりと聞くのです。そうやって話を聞くことで、現場の仕事についてだんだんと理解が深まります。

仕事ができる部下の話を聞くことには、もう一つの効果があります。それは二代目社長が「情報の要」になることができるという効果です。

どうして二代目社長が情報の要になれるのか?それは、仕事のできる部下の話をしっかり聞くことで、仕事のノウハウなどを他の人にも伝えることができるようになるからです。例えば営業ができないで困っている若手がいたら「そういう時に役立つノウハウを、A部長は持っているようだよ。話を聞いてみたら」と提案することができます。

ここで一点、注意すべきことがあります。部下から聞いた役立つ情報を、自分のノウハウのように話してはならないと言うことです。万が一、そうしてしまったら、部下は決して仕事の話をしてくれなくなるでしょう。「イヤな話を聞かなくて良くなった」と喜んではなりません。「情報の要」となるという、二代目社長としての存在意義がなくなる可能性があると言うことです。

私のクライアントであるA社長は、情報の要として機能することで社員から喜ばれ、受け入れられるようになりました。

営業目標がなかなか達成できないことについて、営業部長と話し合っていた時のことです。営業部長は「部下には積極的に外回りをして、既存顧客をリピーター化してもらいたい。一方で、それだけでは目標を達成できないから、新規開拓にも努力してもらいたい。でも日常業務が忙しく、落ち着いて潜在顧客を探す仕事ができないんだ」と話したそうです。

今度はメインテナンス部の部長と話している時に、同じように目標を達成できないジレンマに苦しんでいるという話題になりました。メインテナンス部が目標を達成できないのは、部品を届けるだけで工事は必要ない先にもメンテナンス部員が出向かわなければならないので、工事が必要な先が後回しになってしまう場合があるという話でした。

「お互いがジレンマに苦しんでいるようだ」とA社長が話した時に、妙案を提案してくれたのはメインテナンス部長の方でした。メインテナンス部の顧客名簿を営業部に見せるので、そこに営業すれば良いのではという提案です。配達すべき部品を営業部員が届けてくれれば、すんなり相手先に出向くことができますし、相手方の警戒心を解くこともできそうです。メインテナンス部にとっても、万々歳です。

「自分より仕事できる部下の自慢話がイヤだ」とお考えの二代目社長さん、少し気持ちを切り替えてしっかり話を聞きましょう。そしてその話を必要としている他の部署に伝える「情報の要」になりましょう。こうすることで、二代目社長の存在意義が高まるかもしれないからです。



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