景気低迷に向けた資金調達の備えは万全ですか

 

景気低迷に負けない資金調達の普段から緊急時の対応まで

実施まで1ヶ月を切り、消費税率アップ(増税)に関する報道が増えてきました。今回は低減税率が導入されたため、これに関する報道も多く見られますが、景気への影響についてコメントするものも見受けられます。 本小冊子は、景気低迷により予想される資金繰りへの影響に対処するため、中小企業が予めできる備えについて簡潔に分かりやすく検討することを目的としています。

消費増税だけではない景気低迷要因

ついこの間まで「景気循環の上昇場面が戦後最長を更新する」と話題だったのに、今はその影もありません。消費増税だけでなく、さまざまな要因で景気が低迷すると予想されています。その筆頭に挙げられるのは米中経済摩擦でしょう。アメリカが中国製品を買わなくなったことで中国に部材等を供給していた産業が低迷しており、その影響は大企業だけでなく中小企業にも広がっています。また、アメリカに輸出できなくなった中国が日本に販路を求めており、これまで国内業者が提供していた商品が中国の安価な商品に置き換わるという現象も起きているようです。

これによる影響は短期的なものでは終わらず、長期的に、日本の産業構造変化を促す可能性があります。最近の調査結果では、機械設備投資が低迷しています。景気が低迷すると、もちろん増産のための機械設備は必要としませんが、これまで使ってきた機械設備を更新するには良いタイミングです。企業が使っている機械設備の年齢(ビンテージ)が上昇している中、それでも更新しないとは、「今後は当該機械設備を使った生産は先細っていく」との読みなのかもしれません。現在、事業承継の困難さも話題になっていますから、世代を超えた事業継続そのものに先行きが見えていないのかもしれません。

また日韓関係の悪化が観光客の減少に繋がっていると報道されています。特に韓国と船で簡単に行き来ができる九州地方では、大きな影響をうけている店舗などもあるようです。また、韓国の中小企業とタイアップして事業を進めている日本の中小企業にも影響が出る可能性があります。

このように現在、大企業から中小企業まであらゆる形で景気低迷の影が忍び寄っています。注意深く用心し、考えられる用意をしておくようお勧めします。

売上減少によるインパクト

ここで、売上減少が企業にとって、どのようなインパクトを持つのか検討してみましょう。「売上が減っても、その分の仕入れが減るのだから、あまり問題はないのではないか」という話を聞くことがあります。実際、会計ルールによる損益計算上は売り上げた商品の分だけ原価計上されるので、利益にあまり影響は出ない形で表現されため、錯覚に陥るのでしょう。金庫番を奥様や担当者に任せて自分は営業に専念する社長に、その錯覚に陥る方が多いように感じられます。

しかし実際のビジネスでは売上の前に仕入れがあり、キャッシュが流れていきます。仕入れた商品が売れないと棚卸在庫として積み上がってしまい、いつまでたっても現金に切り替わりません。簡単なケースで考えてみましょう。昨年、100の売上があり、そのために80の仕入れをしたとします。粗利は20です。期初と期末の在庫はそれぞれ20で変化なく、現預金も30で変化がなかったとします。経費は20で収支トントンとしましょう。

今年は売上が90に減少したとしましょう。業務上は昨年同様の売上を期待して80の仕入れをしていましたが、実際に売れた商品に係るのは72なので、損益計算上の原価は72が計上されます。粗利は18、流入するキャッシュは昨年より2減ると感じられます。現預金は28(30マイナス2)と感じられるのです(経費は不変とします)。

しかしこれは錯覚です。実際に仕入れたが売れなかった商品の8(実際の仕入れ:80マイナス損益計算上の仕入れ:72)は在庫に積み増され、28(20プラス8)となります。これはキャッシュを引き下げ、現預金の減少は10(粗利減少分:2プラス在庫積み増し分:8)となり、現預金は20に減少します。これでは給料や家賃などの経費支払いに支障をきたすかもしれません。

以上から、何が分かるでしょうか?景気低迷が予想される時には、これまで以上の備えが必要になることです。一つ目は、経営上の備えです。先の例では、売上減少を敏感に感じ取り、仕入れを抑えなければなりません。例えば仕入れを80から76に抑えられると、現預金の減少は10ではなく6に止まります。経営上の備えとしては、他にも売掛金回収の早期化や適正価格への引き上げ等の事業改善があります。

一方で、早めの資金調達も大切です。借入は、金融機関に申し込んでもすぐにはお金が振り込まれませんから、早めに申し込むのです。実際に売上が減少しなくても、景気後退が明らかになった時点で、手元資金を確保すべく借入することで、万が一にも経費支払いが滞ることがないよう手立てができます。

景気低迷前に事業改善する!

本節では、景気低迷への備えとして、事業改善に焦点を当てて検討します。

売掛金回収の早期化

「景気の悪化が見込まれるが、その影響はそんなには出ていない」という今は、経営上の対策を執るにあたり程よいタイミングと言えます。影響が出始めたら難しい取組の成功可能性が高いからです。

第1は、売掛金の回収を買掛金の支払に先行させることです。80円の品物を100円で売りコストが20円で済むビジネスを回せると収支はトントンで借金の必要はないと思われがちですが、買掛金の支払が売掛金の回収より先行してしまうと自己資金での対応が必要となります。取引が大きいほどその負担は大きくなり、借入が必要になるかもしれません。

これを防止するため、売掛金の回収を買掛金の支払に先行させるよう顧客や取引先に依頼するようお勧めしています。「そうは言うがな、売掛について請求書を出してから支払ってもらう期間をそう簡単に短縮はできない。相手も、そのための準備が必要なのだから。」おっしゃる通りです。ポイントは、売掛の請求書を出すタイミングの早期化です。「それは難しいな。人手不足なのだから。」そういう企業にはIT導入をお勧めしています。

資金調達に苦しむ中小企業のご支援をしていると、売掛金回収の長期化が原因の一つと言える例に出会います。多くの場合「それで何十年もやってきた」という経緯がありますが、買掛金の支払いは短縮化傾向にあります。例えばクレジットカード払いについて。消耗品等をネット購買してクレジットカードで払うと、以前は翌々月払いが多かったが、最近は翌月払いが多くなったと思われませんか?それは店舗側の請求処理が早くなったからです。以前は店舗側が販売した伝票を処理してクレジットカード会社に請求するため一定期間を要していましたが、今はITを活用するとクレジットカード会社への請求までが瞬時で処理できます。これを、利用するのです。

「IT化は、ハードルが高いのではないか?」確かに無料では実現しません。しかし、売掛回収の早期化による資金調達の不要化(減額)と、売掛金請求処理にかかる残業代節約を考えるとペイできるはずです。働き方改革時代に、最適なソリューションとも言えます。「IT導入補助金」などを推進する政府も、まさにこの効果を期待してのことです。是非、前向きに検討して下さい。

適正価格への引き上げ

景気悪化が見込まれるが影響はあまり出ていないタイミングで、次にご検討頂きたいのは、適正価格への引き上げです。「売値が安すぎるので利益が出ない。当社にも利益が出る価格を認めてもらいましょう」という趣旨です。これを言うと「中小企業に値上げは難しい。それに、原価以上の値段だったら売れるだけ利益が出るので、値下げしても売り切った方が良いと聞いたぞ」と反論される場合があります。それは、スーパーが閉店前に安売りするための理論です。中小企業が最初からその値段で売ると、売れば売るほど赤字になってしまいます。

筆者がご支援している企業にも、同様の例がありました。50年以上の業歴を持つ事業サービス業で、優れたサービス品質でお客さまからも高い信頼を得ていました。しかし、利益が出ていません。よくよく話を聞くと、リーマンショック時に引下げに応じて以降、価格がそのままになっていたのです。一方で、サービス向上のため必要となる機材の調達価格は年々、引き上げられています。これでは、利益が出るはずがありません。

社長も営業担当役員も「値上げを依頼した瞬間に取引を止められてしまうのではないか」と疑心暗鬼で、決心を固めるまで約1年を要しましたが、実際はほとんど、顧客を失うことはありませんでした。最初は「だったら今回は契約しない」と言われても、数ヶ月経ったら「やはり貴社でないと」と言って戻ってきてくれます。当社ほどの高品質なサービスは他にはなく、実は妥当価格(割安?)だということに気が付いてくれたようです。

「しかし景気が悪くなったら、また値下げを求められるのではないか?」おっしゃる通りです。だからこそ、今、適正価格までの引き上げをお勧めしています。このままだと、利益が取れない価格から更なる引き下げが要求されてしまいます。今、引き上げておけば、現在の水準に戻るだけでしょう。景気が回復した時に適正価格へ戻すことも、容易になると期待できます。

景気悪化は、中小企業にとって死活問題です。予め準備することでダメージを軽減できる可能性があります。支援が必要ならば、ぜひStrateCutionsにご連絡下さい。手遅れにならないよう、是非、今、手を打ちましょう!

 

景気低迷前に資金調達を準備する!

本節では、今できる資金調達への準備を考えます。

多めの資金調達

筆者は、普段は「借入金をできるだけ減らしましょう」とアドバイスしています。この理由は、一つは資金調達コスト(支払利息)を減らしたいとの意味もありますが、それよりも「しっかり財務管理して事業改善に繋げましょう」という意味合いがあります。筆者は以前に「豊富な資金は7難隠す」という言葉を聞いたことがあります。「売上が下がろうとも、売掛金が円滑にできなくても、思わぬ経費がかかっても、・・・などなどあっても、資金が潤沢にあればトラブルに巻き込まれることはない」という趣旨です。資金を無駄に失うことがないよう戒める教訓で、筆者も強く共感しています。

一方で、この言葉が逆に作用している会社を時として見かけることは、大変残念です。戦後最長の好景気が続いた期間、それなりのパフォーマンスをあげてきた中小企業に対して金融機関は積極的に融資してきました。潤沢に資金をキープできた企業の中には、これをチャンスと積極投資して有効利用した企業もありましたが、残念ながら、そうではない企業もあったようです。現金が十分あることに幻惑され、売上の低下や売掛金回収の滞り、慎重な判断なく行われた冗費の支出などなど、経営上の問題を意識することなく放置してしまった企業があったのです。この状況で従業員の怪我などで売上が下がり赤字に陥ってしまうと、金融機関は途端に慎重な態度に切り替わってしまい、資金調達に窮する例さえあるのです。このため筆者は今まで一般的に、資金調達額を抑えて経営改善に動機付ける方向性でいました。

しかし今や筆者も、潤沢に資金をキープできることを目指した方向性にあります。これはもちろん、今後に金融機関の貸出態度が硬化しても、支援企業が資金繰りに窮することがないようにするためです。不景気になると、自社の業況が悪化して借入しにくくなるという要因以外に、金融機関の業績が悪化して中小企業、特に業況が芳しいとは言えない企業への姿勢が厳しくなり、これまで応じてくれた折り返し融資にも応じてくれないという事態に陥りかねません。そうなる前に、借りられる金額は借りておくのです。

金融機関開拓

景気の陰りが明白化していない時期にやっておきたいことのもう一つとして、新たに借入ができる金融機関を探しておくことが挙げられます。自社所在地から近い金融機関がターゲットです。

金融機関は、顧客毎に取引可能な融資額を決めている一方で、限度額内であっても比較的シンプルな審査で済む範囲と、しっかりとした審査をする範囲を分けています。例えば、融資金額3,000万円未満は支店長決裁、それ以上は本部融資部長決裁というようにです。本部融資部長決裁案件には支店長決裁案件より多くの審査マンが関わり、慎重に審査します。筆者は、普段では、今までの借入実績を超えて資金調達しようとする場合、「これまで付き合ってくれた金融機関に申し込みましょう」とアドバイスしています。当然、従前より詳しい資料や説明が求められ、面倒臭いと思われるかもしれませんが、今まで以上に資金が必要な理由を説明したり、今後の売上や収益の目標をしっかりと説明することで、自らの目標・計画をブラッシュアップしたり、その達成に向けた熱意を強めるチャンスとなります。

しかし、景気が悪くなって金融機関の貸出姿勢が硬化すると予想される場合には、この方針だとうまく回らない可能性があります。厳しい審査を受けた末に融資を受けられないリスクも、織り込んでおく方が良いでしょう。万が一、そうなった時に困らないようにするため、新たな金融機関との取引を始めておくのです。

「今までの金融機関から借入ができなくなってからで、良いのではないか。」そうなった場合でも半年や一年は資金繰りに問題がないなら、それでも良いかもしれません。金融機関は、あまり取引実績のない中で融資することに消極的です(自らが営業で飛び込んだ先は例外です)。普通預金口座を開設するだけでなく、日常取引で活用してもらうなり、定期積金口座を開設して定期的に金融機関を訪れている姿を見るなどして「信頼できる相手だ」と納得し、その上で融資したいと思うのです。実際に借入ができるまでに、このような時間的余裕が必要なのです。

企業経営者としては、景気が悪化しても会社を守る対策を施しておきたいものです。その中に資金調達への備えも、是非、含めておいてください。「理屈は分かったが、具体的にどうすれば良いのか分からない。」そういう方への無料相談も行なっています。是非、お声がけください。

 

緊急時の資金調達方法を頭に入れる

景気がどんどん悪化する中、売上が減少したり販売先からの入金が途絶えるなどすると、仕入先や給料として払うべきお金が足りないなどの事態になりかねません。その時に金融機関に融資を申し込んでも、色よい返事が戻ってくることはほとんどありません。不景気だと融資申込みが倍々ゲームで増える中、企業の先行きは不透明だからです。一方で、経営者はそれで諦める訳にはいきません。ではどうすれば良いか。緊急時に企業を支援してくれる公的な制度を活用してください。もう一つ、融資に頼らない資金調達についても知っておきましょう。

セーフティーネット保証(信用保証協会)

信用保証協会は「経営安定関連保証」と「危機関連保証」を実施しています。両者とも、中小企業の緊急時に対応すべく国の法律に基づいて実施される制度保証です。

経営安定関連保証は「連鎖倒産防止」、「取引先企業のリストラ等の事業活動の制限」、「突発的災害(事故等・自然災害等)」、「全国的に業況の悪化している業種」等に該当している中小企業が、その旨について事業所住所地を管轄する市町村長又は特別区長の認定を受けた場合に利用できる制度です。経営の安定に必要な事業資金として、一般の普通保証枠とは別枠(返済期間:10年以内(うち、据置期間:2年以内))で、100%の信用保証を受けることができます(以前に『信用保証協会の保証枠を使い切っているので、これ以上の保証は受けられません』と言われた場合でも、利用できる可能性があります)。

危機関連保証とは、「取引先等の再生手続等の申請」や「事業活動の制限」、「災害」、「取引金融機関の破綻」、「大規模な経済危機等による信用の収縮」等により経営の安定に支障を生じている中小企業者が、その旨について事業所住所地を管轄する市町村長又は特別区長の認定を受けた場合に、一般枠及び経営安定関連保証とは別枠で利用できる制度です。

これら保証による融資を受けたい場合、住所地又は事業実体のある事業所の所在地である市町村(または特別区)の商工担当課等の窓口に認定申請してください。また、認定書が得られたらストレートに保証・融資が得られる訳ではなく、当該認定書をもって金融機関に融資を申し込んで頂き、金融機関・信用保証協会による審査を経てから融資が行われますので、時間的余裕を持って取組を行ってください(以下は東京信用保証協会サイト)。
https://www.cgc-tokyo.or.jp/institution/needs.html

セーフティーネット貸付(日本政策金融公庫)

日本政策金融公庫は、「セーフティネット貸付」として「経営環境変化対応資金」、「金融環境変化対応資金」及び「取引企業倒産対応資金」を実施しています。いずれも国の法律に基づいて実施される制度貸付です。

「取引企業倒産対応資金」は、取引企業など関連企業の倒産により経営に困難を来している方で、「倒産した企業に対して50万円以上の売掛金債権などを有する方」、「倒産した企業に対する取引依存度が20%以上である方」、「倒産した企業に対して貸付金や差入保証金などの債権を有する方」、「倒産した企業の債務を保証している方」、「倒産した企業の設置する商業施設に入居している方であって、倒産の影響を受けている方または影響を受けるおそれのある方」、「倒産した企業から受注した商品や役務などが、倒産の影響により取り消された方」のいずれかに該当する方が利用することができます。企業の運営上一時的に必要となる運転資金として別枠として3,000万円(返済期間:8年以内(据置期間:3年以内))の貸付を受けることができます。

この貸付は、お近くの日本政策金融公庫(国民事業)窓口にお申込みください(以下は日本政策金融公庫サイト)。
https://www.jfc.go.jp/n/finance/ search/index.html

借入ができなかった場合

「金融機関にも、公庫にも、保証協会にも打診したが、新たな融資は受けられなかった。しかし会社は絶対に潰したくない。今を乗り切って回復を待つ方法はないか。」そう決意を固めるなら、まずは金融機関に現在借入の返済猶予(リスケジュール)を依頼しましょう。「リスケは返済の猶予であって、資金調達ではないぞ。」いえ、資金調達です。

年商2億円、借入金残高1億円の企業で考えてみましょう。取引先が倒産して売掛金300万円の回収が不可能になりましたが、これを原資に期待した買掛金の支払が不要になる訳ではありません。借入しようとしましたが、事情によりできませんでした。どうするか?金融機関に返済を一時、猶予してもらうのです。1億円を返済期間5年で借りていれば毎月の返済金は約166万円。この場合、買掛金の支払いが翌月なら、問題なく支払いができます。

 

終わりに

中小企業いや全ての企業にとって資金は血液です。景気後退時には資金が不足する傾向がありますから、いざという時の調達策について頭に入れておくことは、経営者にとって最重要な役割といっても過言ではありません。本小冊子でご説明した内容を是非、記憶の片隅に入れておいてください。

事業改善や資金調達でお困りの場合には是非、StrateCutionsにご一報ください。皆さんの愛する会社が不景気を乗り越えられるよう、そして日本の輝かしい未来を担い続けていけるよう、力を合わせていきましょう!

 

PDF版でダウンロードできます。

本記事をPDF版としてまとめました。読みやすいように、座右に置いておきいざという時に読み返せるように、ダウンロードしておいてください。

<ダウンロードは以下URLから>

https://www.innovations-i.com/shien/content/download/100.html



コメントを残す