こんにちは、StrateCutions G さん

「10億宣言」を読み解く
― 政府が示した「10億企業」政策の目的・支援策・対象等 ―
「10億宣言」とは私たちStrateCutionsが現在、注目している政策です。
2026年9月時点では、100億宣言のような正式な申請・宣言制度としてはスタートしていません。
一方、中小企業庁の2026年5月に発表された「労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略(案)に伴う政策の見直しについて(概要)(以下「見直し概要資料」といいます。)」では、売上高1億円~10億円未満の企業を対象に、10億円を目指す企業の成長を支援する政策スキームが示され、その後の政策文書でも関連する方向性が示されています。StrateCutionsは、売上高10億円の達成を目指す宣言を行った企業に対し、国がさまざまな形で後押しする政策が設けられると期待しています。
本ページでは、見直し概要資料等をもとに、「10億宣言」が目指すもの、対象となる企業、企業に求められること、想定される支援策について、StrateCutionsの視点から読み解きます。なお政府は未だ「10億宣言」という用語は用いていませんが、本ページでは政府資料で示されている『10億円企業創出に係るスキーム』を、便宜上『10億宣言』と呼んでいます。今後、制度設計や名称等が変更される可能性があります。

「労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略(案)に伴う
政策の見直しについて(概要)P.10
(出典)https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/soukai/045/dl/002_2.pdf
「10億宣言」に注目する理由
まだスタートしていない「10億宣言」政策に私たちが大きな興味が寄せているのは、以下の理由によるものです。
1.2025年から「100億宣言」政策が実施されており、「10億宣言」は「地域深くへ成長の浸透を図る」ために予定されていると考えられ、実現する可能性が高いと考えられる。8月末の概算要求においても10億宣言政策に関連すると考えられる施策が幾つか挙げられており、実現への期待が高い。
(当HPブログ)https://stratecutions.jp/2026/09/10/2027fy-budget-requests/
2.100億宣言政策では成長加速化補助金をはじめとしたユニークかつ強力な支援策が実施されていることから、10億宣言においてもユニークな支援策が設けられる可能性がある。
3.100億宣言政策の対象となるのは約9.1万者であるところ10億宣言政策の対象は約60万者と、対象となる企業が多い。
4.成長加速化補助金で100億宣言が要件とされたのと同様、いくつかの補助金等において10億宣言が要件となる可能性があることが概算要求において示され、更には成長志向の小規模事業者(売上1億円や高収益を目指す企業)などを創出するメカニズム構築にも拡張される旨が見直し概要資料に示唆されている。このことから10億宣言政策を軸に、中小企業政策の枠組みに変更が加えられる可能性が感じられる。
5.以上から数多くの中小企業に大きな影響を及ぼす制度となる可能性があるばかりか、地方創生などにも影響を及ぼすとも考えられる。
10億円企業創生支援研究会
以上からStratecutionsグループでは「10億宣言」政策に注目、政策そのものに加えて、企業が10億企業を目指す場合の方法等についても研究すると共に、実地での企業支援あるいは金融機関支援にも生かしていくこととしました。この主体が「10億企業創生支援研究会」です。
今後の「10億企業創生支援研究会」からの情報発信にご期待ください。
(参考)情報サイト InnovationS-i インタビュー記事
「10億円企業創成支援研究会」設立、成長志向の中小企業にワンストップで実践的支援
https://www.innovations-i.com/interview/coverage/?id=299
国が示した姿
「10億宣言」は、売上高1億円〜10億円未満の中小企業(約60万者)を対象に、売上高10億円や高収益化などの成長経営を目指して経営者が本気で取り組むことを表明・公表する仕組みです。
見直し概要資料から読み取れる「10億宣言」の目的、仕組み、背景、および支援策のポイントは以下の通りです。

「労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略(案)に伴う
政策の見直しについて(概要)P.12
(出典)https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/soukai/045/dl/002_2.pdf
1. 目的と期待される役割
- 地域への成長浸透:成長を地域深くにまで浸透させ、地域内での発注継続による他企業の賃上げ下支えや、地域のM&Aのコア(核)となることが期待されています。
- 経営の質の向上: 単に売上高10億円を目指すだけでなく、経営の質を高めることで経営者が求める価値を実現できる企業への飛躍を目指します。
2. 10億宣言の仕組みと公表内容
- 「二つの本気」によるコミットメント: 経営者が成長経営への本気を示す「宣言」と、地域金融機関(メインバンク)による本気の「伴走支援」の表明をセットにして推進されます。
- 公表される宣言内容:
- 経営者のビジョン
- 事業価値の磨き上げ
- 経営基盤の構築
- 地域経済への貢献
- 金融機関の伴走支援方針 等
3. 対象企業の課題とメインバンクの役割
- 企業の特長・課題: 100億企業と比較して経営経験や資金調達力が乏しく、右腕人材の不在やIT/DXの遅れなど、成長投資に踏み切るための経営基盤が十分整っていないケースが多く存在します。
- メインバンクの重要性: デッド・ガバナンス(融資を通じた規律付け)が有効な層であるため、メインバンクが伴走し、成長を持続可能にする真水の成長資金(プロパー融資)を調達できる基盤構築を支援します。
4. 選定基準と集中支援策
- 選定で重視される要素: 要素技術や特色ある商品・サービス、潜在力ある技術者など、経営者が生み出す多様な事業価値や地域への波及効果が重視されます。
- 主な支援施策:
- 経営支援: 人材確保やソフト支援の充実。
- 金融支援: 成長資金の呼び水となる新たな政策金融の供給。
- 投資支援: 設備投資や販路拡大に向けた補助制度等の効果的活用。
なぜ今、「10億企業」が注目されているのか
10億円という売上高そのものが企業を強くする側面も考えられますが、10億円規模の成長を目指す過程で経営のあり方が変わることに意味があります。10億円規模を目指す過程で、事業・組織・人材・財務などの経営基盤を整えることが、生産性向上や事業の安定につながる可能性があるのです。
政府は、売上高10億円を一つの目安として、成長志向の中小企業を増やし、「稼ぐ力」の強化や経営基盤の高度化を促そうとしているものと、StrateCutionsでは読み取っています。

経営状況と生産性・倒産の関係
(出典)10億円企業創成支援研究会(StrateCutions)調べ

労働生産性(企業規模別・%タイル)
(出典)中小企業白書2024年版
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/chusho/b1_3_3.html

売上規模別倒産件数
(出典)リスクモンスター
https://www.riskmonster.co.jp/pressrelease/post-20291/
企業が10億円を目指せない理由
2025年版中小企業白書では、企業規模を拡大する「スケールアップ」に向けて、10億円未満の企業では、経営計画策定や資金繰り、人材確保・育成、あるいは経営者の兼務解消・権限委譲などが重要な経営課題となっていることが示されています。これらが10億円への成長の壁となっている可能性があると考えられます。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap2_web.pdf
見直し概要資料には「10億宣言」の対象となる企業が成長投資に踏み込めない理由として、以下の6分野の具体的な課題症状が挙げられています。
- 経営面: 経営経験が乏しい、家族経営の状態で「仕組み」がない
- 販路面: 価格交渉力が弱い、ブランド化・差別化されていない
- 人材面: 防衛的賃上げで人材を維持・確保できない、番頭・右腕がいない。
- 組織面: 社長が全て切り盛り、機能分担の仕組みができていない
- システム面: IT・DX・AIが必要と分かっていても実装できない
- 資金面: 資金調達力が弱い、返済に追われ設備更新がやっと。
予想される支援策(方向性)
以上の課題症状あるいは成長の壁を打ち破れるよう、見直し概要資料では支援策の方向性が示唆されています。
10億宣言を行った企業が経営・販路・人材・組織・システム・資金などの課題に立ち向かうため、資料では主に「伴走支援による経営基盤構築」「ソフト・人材支援」「投資支援」「金融支援」の4つのアプローチによる対処が想定されています。
1. メインバンクによる「伴走支援」と「経営基盤の構築」
- 経営・組織面への対処: 家族経営からの脱却や社長ワンマン体制からの機能分担、経営経験不足に対応するため、成長に向かえる経営管理能力の高度化と経営基盤の構築を進めます。
- デッド・ガバナンスの活用: この階層はデッド・ガバナンス(融資を通じた規律付け)が有効なため、厳しい時も含めて二人三脚で成長を実現できるよう、地域金融機関(地銀・信金等)のコミットを求めて自律的な成長の仕組みをつくります。
- 宣言による可視化と仕組み化: 「経営者のビジョン」「事業価値の磨き上げ」「経営基盤の構築」「金融機関の伴走支援方針」等を宣言・公表させることで、組織や経営の可視化と見直しを図ります。
2. 人材確保支援・ソフト支援の充実
- 人材・システム面への対処: 防衛的賃上げによる人材流出や番頭・右腕不足、IT・DX等の実装不全といった課題に対して、人材確保支援をはじめ、成長に必要な経営管理能力の向上や組織・体制構築に向けたソフト面の支援が充実・強化されます。
3. 投資支援(補助制度・設備投資・販路拡大)
- 設備投資・販路拡大への補助金の効果的活用: 宣言実現に向けた設備投資や販路拡大を後押しするため、補助制度や補助金が効果的に活用・集中支援されます。
- 賃上げ要件の活用: 一人当たり賃金の要件厳格化や目安額を超える賃上げへの加点措置を設け、人材確保や賃上げの好循環を後押しします。
4. 新たな政策金融とプロパー融資基盤の調達支援
- 資金面への対処: 成長資金の呼び水となる新たな政策金融が提供されます。
- 真水の成長資金(プロパー融資)の確保: メインバンクの伴走支援を前提に、成長を持続可能にする真水の成長資金(プロパー融資)を十分調達できる経営基盤の構築が支援されます。
※ここで示しているのは2026年9月時点の政策資料から読み取れる方向性であり、今後の制度設計によって具体的な支援内容は変更される可能性があります。
想定されるターゲット企業
2つの資料から読み取れる「10億宣言」がターゲットとする企業像(どんな会社を対象にしているのか:属性)は以下の通りです。
1. 規模・位置づけ
- 売上規模: 売上高1億円〜10億円未満の中小企業(約60万者)が対象となります。
2. 定性的な強み・潜在能力
- 「とらえきれない価値」と事業価値: 要素技術、特色ある商品・サービス、潜在力のある経営者・技術者など、単なる数値にはとらえきれない価値や、成長拡大の核となる事業価値を有しています。
- 地域への影響力: 地域に有意な変化をもたらす、あるいは地域に残すべき強みを持っており、地域深くへ成長を浸透させることが期待される地域企業です。
3. 地域経済で期待される役割
- 他企業の支援とM&Aの核: 地域での発注を継続することによって他の中小企業の賃上げを下支えするほか、地域のM&Aのコア(核)となる役割が期待されています。
4. 経営者および金融機関のコミットメント
- 「二つの本気」: 売上高10億円の達成や高収益化などの成長経営に向けて経営者が本気で取り組む意欲があり、かつメインバンクも本気で伴走支援を行う体制・意欲が揃っていることが求められます。
5. 現状の課題と経営特性
- 成長基盤の未整備と各種課題: 100億企業と比較すると経営者の経験不足のほか、販路・人材・組織・システム・財務(資金調達力の弱さやワンマン体制、右腕の不在、DX未実装等)の面で課題が多く、成長投資に踏み切るための経営基盤が十分に整っていません。
- 金融面の特性: 100億企業と比べて、融資を通じたデッド・ガバナンス(規律付け)が有効に機能する層と位置づけられています。
想定される10億宣言の要件等
2つの資料から読み取れる、「10億宣言」の想定される要件・選定基準および公表内容(その会社に何を求めるのか:コミットメント)は以下の通りです。
1. 対象企業の規模・属性要件
- 企業規模: 売上高1億円〜10億円未満の中小企業(約60万者)が対象層となります。
- 事業価値(潜在力): 要素技術、特色ある商品・サービス、潜在力のある経営者や技術者など、単なる数値には「とらえきれない価値」を含め、成長拡大の核となる事業価値を有していることが求められます。
- 地域への貢献度: 地域に有意な変化をもたらす、あるいは地域に残すべき強みを有しているなど、地域経済への貢献が期待できる企業であることです。
2. 経営者の取り組み要件
- 成長経営への本気のコミット: 売上高10億円の達成や高収益化など、成長経営を目指して本気で取り組む意思があることです。
- 経営の質の向上・基盤構築: 単に売上規模を目指すだけでなく、成長に向かうための経営管理能力の高度化や経営基盤の構築、経営の質を高める取り組みを行うことが含まれます。
3. メインバンク(地域金融機関)の要件
- 本気の伴走支援: 厳しい局面も含めて成長を二人三脚で実現するため、メインバンク(地域金融機関)による本気の伴走支援の表明・コミットメントが得られることが必須要件となります。
4. 宣言内容および公表要件
選定にあたっては「経営者の本気」と「メインバンクの伴走」の双方が重視され12、金融機関の伴走の下で以下の項目を含む宣言を行い、内容を公表することが求められます。
- 経営者のビジョン
- 事業価値の磨き上げ
- 経営基盤の構築
- 地域経済への貢献
- 金融機関の伴走支援方針 等
読み取れる企業への期待
政府が現在企業(特に中小・小規模事業者)に対して期待している主な事項は、「稼ぐ力の強化」「賃上げの好循環への貢献」「積極的な成長投資」「地域経済の牽引」の軸に集約されます。
1. 「稼ぐ力」の強化と成長志向への転換(経営改革)
- 成長目標の設定と達成: 緩やかなインフレ環境において、従来の現状維持から脱却し、企業規模に応じて売上高100億円・10億円・1億円や高収益化といった成長経営を目指すことが期待されています。
- 経営の質の向上と基盤構築: 家族経営やワンマン体制から脱却し、成長に向けた経営管理能力の高度化や機能分担などの経営基盤を構築することが求められています。
2. 「一人当たり賃金」の引き上げと賃上げの好循環
- 実質的な賃上げの推進: 単なる給与支給総額の維持・拡大にとどまらず、「一人当たり賃金」の厳格な引き上げや、中央目安額を超える賃上げを実施することで、経済全体の賃上げの好循環を推進することが期待されています。
3. 設備・DX・人材への「成長投資」の実行
- 将来に向けた投資の実施: 補助金や政策金融、民間融資を活用しながら、設備投資や販路拡大、IT・DX・AIの実装、人材確保といった積極的な成長投資へ足を踏み出すことが期待されています。
4. 地域経済への貢献と成長の波及
- 他企業の賃上げ下支え: 自社が成長して地域内での発注を継続・拡大することにより、地域内にある他の中小企業の賃上げを下支えすることが期待されています。
- M&Aの核(コア)としての役割: 地域のM&Aのコアとなり、地域経済の活性化や事業継続を牽引する存在になることが期待されています。
- 独自の「事業価値」の磨き上げ: 要素技術や特色ある商品・サービスなど、単なる数値には表れない「とらえきれない価値」を磨き上げ、地域に有意な変化をもたらすことが期待されています。
5. 経営者の「本気」のコミットメントと公表
- ビジョンの宣言と公表: 経営者自らが将来のビジョンや経営基盤構築、地域貢献などを明確にした「宣言」を行い、メインバンクの伴走のもとで公表・実行していくことが期待されています。
このページの終わりに
政府は10億円を目指す企業を増やし、その成長を支える政策の方向性を示しました。
では企業は10億円という成長目標に向けて何をどう取り組めば良いのでしょうか。
StrateCutionsでは、10億円企業への成長を単なる売上拡大とは考えていません。
「どこへ成長するのか」という成長方向、
「成長を支えられる会社になっているか」という企業体、
「それを動かす経営力。
この3つを一体として考える必要があると考えています。
この点についてはページを改めてご説明します。
